伊津部小学校のしおかぜ学級にお邪魔してきました
執筆:ムラタ マチヨ(まーじんママライター)
前回のコラムでは、奄美市の特別支援学級と通級教室についてご紹介いたしました。
★前回のコラムはこちら→お子さんの就学に不安があるならまずは相談を!特別支援学級、通級指導教室についてご存じですか?
伊津部小学校のしおかぜ学級を取材させていただき、担任の脇村先生から自立活動に関するお話を伺いました。
そのお話がとても興味深く、みなさんにも知ってもらいたいと思い、コラム第二弾を書かせていただくことになりました。
しおかぜ学級のさまざまな工夫は子をもつ親みんなにとって、ためになる気づきもありました。ぜひ、たくさんの方に読んでいただきたいです。
※ご紹介する内容は2020年度の伊津部小学校しおかぜ学級を取材した内容です。他の特別支援学級や、2021年度以降のしおかぜ学級とは授業内容が異なります。
自立活動とは
自立活動とは、小中学校の特別支援学級に在籍する児童・生徒が受ける授業の一つです。
自立活動を行う目的は「特別支援学級の児童が抱えている学習上もしくは生活上の困難を改善し、心身の調和的発達を促すこと」です。
担任の先生が児童・生徒それぞれに指導計画をたて、一人ひとりに適した支援を行います。
取材前の私の勝手なイメージでは、楽しい雰囲気で和気あいあいと学習していくものを想像していました。
実際見学してみると、和やかな雰囲気ではあるものの、授業に対しては先生も児童も真剣そのもの。
とある日のAさんと、Bくんの自立活動の時間を見学させていただきました。その時の様子を、紹介します。
しおかぜ学級Aさんの自立活動
自立活動の授業はその児童によって内容が異なります。
Aさんの自立活動の時間は、主に身体能力を引き出すための運動に使っています。
担任の脇村先生は、Aさんの身体面での不安なところをしっかりと把握し、日常生活を送るのに必要な力をつけるため、Aさんに合わせた授業を構成しています。
体幹を鍛えたり、足の筋肉をしっかり使う練習をしたりするために、前屈、片足バランスなどさまざまな体操をしていきます。
Aさんは給食当番の時など、重いものを持っての階段の上り下りに不安があるとのことで、階段の上り下りも練習していました。
先生はAさんの様子に合わせながら声をかけ、Aさんも先生の熱意に応え、真剣に取り組んでいました。
お二人にとってはいつもの授業のワンシーンですが、私にとってはとても感動的な姿でした。
しおかぜ学級Bくんの自立活動
また別の日にしおかぜ学級にお邪魔して、Bくんの自立活動の様子を見学させて頂きました。
Bくんの自立活動の時間では、左右の感覚を鍛えたり、感情表現をしたりする練習などを行います。
この日は左右の感覚を鍛える練習を2種類行いました。
まずは椅子に座って、方眼用紙のスタート位置から先生の指示通りに指を動かすゲーム。
先生の「右に2、下に5、左に4・・・」という指示にしっかり耳を集中させ、指を動かしていきます。
最後に先生が持っている答えと、Bくんの方眼用紙の指の位置が同じであれば正解です。
つぎは全身を使って先生の指示通りに動く練習。
「右手をあげて」「左をむいて」と先生の声がかかると、Bくんはその通りに動きます。
先生が言ったとおりに右手をあげるBくん。
次は、感情を表現する練習。
Bくんは集団の中に入ると表情が固まってしまうなど、コミュニケーションを取るのが難しいときがあります。
脇村先生が準備していたのは「はぁって言うゲーム」という市販のカードゲーム。
この商品を本来のルールとは違った使い方をして、感情を表に出す練習をします。
カードには「安心の『はぁ』」や「憧れの『はぁ』」など、さまざまなお題が書かれています。
先生が出すお題を児童が演じて、感情を表現する練習をします。
先生が「おどろいたときの『はぁ』、やってみよう!」とBくんに声を掛けます。
私の子どもも集団の中では表情がとぼしくなることがあり、このゲームを家庭でやってみたいと思いました。
お題をいう先生とBくん。
見学させていただいて気付いたこと
2回の自立活動の授業を見学させていただき、共通して脇村先生が徹底してされていたことがあります。
その中でも下記の4つは、家庭での子育てにも生かせることだったので紹介します。
①あいさつを大切にする
まず教室に入ってきたら、あいさつ。
しおかぜ学級のみんなは私に対してしっかり「こんにちは」と目を見て言ってくれました。
取材期間中気付いたのは、脇村先生が何度も「相手の目を見て」と児童に伝えていたこと。
これはしおかぜ学級の児童だけでなく、どの児童にも同じように指導しているとのこと。
私は子どもに挨拶の大切さを丁寧に伝えられているかなぁ…と反省しました。
②見通しがもてる工夫
自立活動の始まりには、脇村先生が小さなホワイトボードを使ってその日の授業の流れを説明します。
そうすることで児童は授業の見通しをたて、安心して活動に取り組むことができます。
私自身の子育ての中でも、予定を子どもに伝えておくことで、その後のスケジュールがスムーズに進んだ経験があります。
小さなボードに書いておくことで、視覚的にもわかりやすく、授業の途中にも見返せ、今何の活動をしているのかも確認ができるのでいいなと思いました。
③具体的なイメージでわかりやすくする工夫
Aさんと柔軟体操をしているとき、脇村先生は
「あと10センチ、前に手を伸ばせるかやってみようか。10センチってね、これくらいだよ」と手で10センチを作り説明されていました。
言葉だけで「10センチ」と言われるよりも、目でみて「これくらい」と説明された方が分かりやすいですよね。
④達成感を感じやすくする工夫
同じく柔軟体操の場面で、脇村先生は
「何秒くらいできそうかな?」とAさん自らに目標を立ててもらっていました。
目標10秒を達成すると
「10秒できたね!!すごーい!」
「どうする?次はもう少し長くやってみる?できそうかな?」と、
こちらから強制的にやらせるのではなく、Aさんの気持ちを聞いているのが印象的でした。
「Aさんの体は、こんなに伸ばせるんだよ」
「できるってことを、覚えておいてね」と、前向きな声かけが続きます。
目標が具体的な数字としてあることで達成感を感じやすく、その場で先生から「できている」と声かけられることで、児童の大きな自信につながると思いました。
まとめ
担任の脇村先生はお話の中で
「子どもたちの能力を引き出すために、あの手この手を尽くしています。一生懸命やれば必ず成長がみられるので、それがとても嬉しいです。それぞれの良いところをより伸ばしていけるようにしたいですね。一番大切なことは、みんなが楽しく学校生活を送れることだと思っています。」と仰っていました。
先生の情熱は児童たちに伝わっていると感じ、児童たちもそれに応えて真剣に取り組んでいたことが印象的でした。
家庭でもできるような工夫がたくさんあり、私もさっそく真似してみようと思います。
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